DXを通した中小企業の労働生産性向上

Labor Productivity

ゴールとKPI

2030年

ゴール
デジタル化・DXの推進基盤となるビジネスプラットフォームを通して、誰もが一歩を踏み出せるソリューションを創出し、中小企業を主体とした持続可能な経営の実現を支援している
KPI
当社ビジネスプラットフォームを利用する日本の中小企業数: 100万社以上

※ 当社のビジネスプラットフォームとは、「Chatwork」および「Chatwork」の利用を基盤として提供されるDXソリューションに関わるサービス群を指す。

2024年

ゴール
中小企業における国内シェアNo.1のビジネスチャットサービスにより、日本のビジネスコミュニケーションの効率化に大きく貢献し、これを基盤にDXの推進支援を拡大している
取り組み
Chatworkの普及およびBPaaSの推進を通じて中小企業のDXと生産性向上に貢献する事業戦略を推進(2024年度末時点でChatworkを利用する中小企業数:88万社超、BPaaSを提供する主なサービス分野:経理・会計、労務、採用、営業事務)

活動を通して貢献するSDGsゴール

  • 働きがいも経済成長も
  • 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • すべての人に健康と福祉を

考え方と体制

中小企業の生産性向上にむけた考え方・アプローチ

330万社を超える日本の中小企業の生産性向上を実現するには、中小企業ならではの経営や現場の課題を理解し、その課題解決を数万社単位で実現する革新的で効率的なアプローチが必要です。

当社は、すべての職種の従業員が高頻度で日常利用し得る「社内外コミュニケーションの中心となるビジネスチャット」を、中小企業のITに不慣れな利用者も使いこなせるように徹底的に利用しやすさを高めて提供することで、ITの専門家が少ない中小企業が「IT化の最初の一歩」を踏み出すことを可能としました。この結果、高い顧客満足をいただき(サービス解約率0.25%、2024年12月末時点)、中小企業向けビジネスチャットとして国内利用者数No.1*1となる導入社数91.4万社のサービスに成長しました(2025年3月末時点)。

中小企業向けビジネスチャット 「Chatwork」

そして、このビジネスチャットを基盤に、当社を含むIT企業が開発・提供する様々な中小企業向けサービスのうち優れたSaaS*2を選定し、専任のDXアドバイザーがその企業に最適なサービスの選定・導入をワンストップでサポートする「DX推進プラットフォーム」を構築・提供しており、中小企業のDXと業務課題の解決をトータルで支援する環境を整備しています。

Chatwork DX相談窓口

これらのサービス提供を通じて中小企業の現場への理解を深める中、多く企業が慢性的な人手不足に苦しんでいるにも関わらず、人手不足解消の鍵となる複数のITやSaaSを使いこなすことが難しく、IT化・DXを進めるネックとなっていることがわかりました。

これを受け、SaaSを使いこなすことが難しい中小企業でもDXの恩恵を享受できるサービスを開発しました。これが業務プロセスごと外注するSaaSサービス「BPaaS(Business Process as a Service)」です。

クラウド型業務アウトソーシングサービス「Chatwork アシスタント」

企業には、経理の仕訳けや請求書発行、労務の経費精算や年末調整、採用のスカウトメール対応、営業の見積書作成など、SaaSやAIを活用することで効率的に処理できる定型性の高い業務が多数存在しています(これを当社グループでは「型化できる業務」と呼称)。本サービスは、これらの業務を特定した上で、SaaSの活用が難しい中小企業に変わって当社グループ内にSaaSやAPI*3やAIを駆使した効率的な業務プロセスを構築し、BPaaSクルーと呼ぶ各業務に精通した専門スタッフがChatwork経由などでいただいた中小企業のご要望を受けて業務を効率的に代行し、成果をご提供するものです。

本サービスは、業務プロセスの一部を外部委託する「BPO」(Business Process Outsourcing)に似ていますが、3つの点で大きく異なります。1つ目は、多くのBPOで必要となる「業務マニュアルの作成や担当者の育成が不要」であること。2つ目は、繁忙期や担当者の急な離職時などに「業務量に応じて10時間単位で柔軟に利用できる」こと。3つ目は、業務経験が豊富なスタッフが対応するにも関わらず「より低コスト」で依頼できること、です。

この「Chatwork」と「BPaaS」を組み合わせることで、330万社を超えると言われる日本の中小企業にDXの恩恵を提供し、生産性向上に貢献したいと考えています。

  • *1 Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView Customized Report 2024年4月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。 調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む41サービスを株式会社kubellにて選定。2025年3月末時点
  • *2 SaaS: Software as a Serviceの略(サースまたはサーズと読む)で、クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスのこと。PC等へのソフトウェアのインストールが不要で、ベンダーが提供するクラウドサーバーにアクセスするだけでソフトウェアを使用できる。
  • *3 API: Application Programming Interfaceの略。ソフトウェア、プログラム、Webサービスの間をつなぐ仕組み

推進体制

この実現にむけて、当社グループでは、Chatworkの普及を株式会社kubellが進めると共に、BPaaS事業を推進する専任子会社として、株式会社kubellパートナーを2024年4月に設立しました。さらに、2025年7月には人事・労務管理サービスを提供するグループ会社の株式会社ミナジンを株式会社kubellパートナーに統合し、BPaaSの推進体制を一層強化しています。

事業を通じた顧客・社会への提供価値

ChatworkおよびBPaaSサービスによる労働生産性向上・DX推進などの価値階層を示す図

主な取り組み

中期経営計画における取り組み

当社グループでは、Chatworkを基盤にBPaaSを伸長させることで、2026年までに「中小企業No.1 BPaaSカンパニー」のポジションを確立することを目指しています。この実現にむけて中期経営計画では3つの戦略を推進しています。1つ目は、Chatworkの利用者数とアクティブ率の更なる向上を通じてビジネスプラットフォームの価値を向上させる「コミュニケーションプラットフォーム戦略」。2つ目は、BPaaSによる支援可能な業務領域を広げ、より多くの中小企業のDXを実現する「BPaaS戦略」。3つ目は、グループアセットを活かした新規事業やAI活用にむけたR&Dなどを進めることで次なる価値創造の柱を開発・実装する「インキュベーション戦略」です。

PLG・BPaaS・インキュベーションの3戦略を連携させた成長フレームワーク図

これら3つの戦略を有機的に組み合わせることで、これまで進まなかった330万社を超える日本の中小企業のDXを実現し、生産性向上に貢献したいと考えています。「DXを通じた中小企業の生産性向上」は当社グループのミッションそのものであり、グループを上げてその実現に取り組んでいます。最新の計画とその実績については「IR情報」ページにある「中期経営計画」と最新の「決算説明資料」をご覧ください。

中期経営計画および決算説明資料

BPaaSが実現する中小企業の人手不足の解消と生産性向上への貢献

BPaaS(Business Process as a Service)は、業務プロセスそのものをクラウド経由でアウトソーシング(BPO)することを可能にするサービスです。
SaaSが対象とするユーザーは主に自社でツールを選定・導入し使いこなすことができる「ITに詳しい先進層」ですが、BPaaSは自社でIT・SaaSを導入し使いこなすことが難しい日本の企業人口の3分の2以上を占める「マジョリティ層のユーザー」です。

そして、BPaaSは、中小企業でも使いこなすことが容易なビジネスチャット「Chatwork」を介して専任のオペレーターに相談・依頼が行え、IT・SaaSに関する専門知識や業務マニュアルの整備なども不要であるため、サービス利用までのハードルを圧倒的に下げています。また、高額なソフトウェア購入や大規模なシステム構築が不要で、初期投資を最小限に抑えた料金体系を採用しているため、資金力を持たない中小企業でも容易に導入できます。また、月10時間単位で利用することができるため、成長段階や必要な業務量に応じて柔軟に利用することが可能です。

依頼された業務の裏側では、弊社グループ内にSaaSやAPI連携による自動化エンジンやAIを活用した効率的な自動処理プロセスを構築しており、BPaaSクルーと呼ぶ高い専門性を持った専属スタッフがこれを駆使して業務を行う「テクノロジーと人のハイブリッドなオペレーション」を構築することで、従来のBPOでは難しかった効率的で安定した業務処理を実現しています。

BPOが、労働作業を単純に代替するサービスであるのに対し、BPaaSは上記のようにAIや各種SaaSをAPI連携させた高度な運用により「DXされた業務プロセス」を提供します。システムによる自動対応で業務処理工数を大幅に圧縮しており、少ない人的リソースでサービス提供が可能です。

さらに、BPaaSは、非中核業務に必要な専門人材を自社で雇用する必要性を大幅に軽減します。ITエンジニアはもちろん、会計や労務等の専門知識を持つスタッフを自社で雇用する代わりに、BPaaSを通じて必要な業務を外部の専門家に低コストで依頼することができます。これにより、人手不足が深刻な事業環境下でも競争力を維持し、中核業務への経営資源投入を強化することができます。

以上から、BPaaSは、中小企業の「人手不足」「予算不足」「IT人材・ITリテラシーの不足」などの経営課題を解決し、「省人化」「生産性向上」という価値の提供を実現します。

今後は、BPaaSで提供する業務領域について、「広さ」と「深さ」を共に備えるサービスの実現を目指しています。具体的には、秘書業務・事務業務など非専門領域を幅広くカバーしつつ、士業などの専門家の知見が必要な領域についてもサービスを拡充する計画です。これにより日本の中小企業の非中核業務をワンストップで支援し、生産性向上に貢献する事業の実現を目指していきます。

BPaaSとは

BPaaS、SaaS、PaaS、IaaSのクラウドサービスモデルの違いを示すグリッド図

BPaaSの対象顧客

SaaSとBPaaSのターゲットユーザーや特徴の違いを比較した図

当社が展開するBPaaSのイメージ

ChatworkとBPaaSによる業務プロセスの流れとAI・SaaS・人の連携を示す図

BPaaSを用いた中小企業の生産性向上事例
「三喜運輸株式会社 請求業務で担当者1人分の工数削減に成功!」

三喜運輸株式会社の業務車両の写真
三喜運輸株式会社の業務車両

BPaaS導入前と導入後の効果

課題 解決策 効果
  • 管理部が少人数ですべてのバックオフィス業務と経理業務を回していた
  • 基幹システムを使いこなせない状況が続いていた
  • 求人業務が集中すると業務が回らなくなっていた
  • 請求、経費精算、採用から入社手続きまでの一連の業務でBPaaSを利用
  • 新しい運用方法を全員が使えるようになるまで一貫したサポート
  • デジタルに不慣れなスタッフでも問題なく利用
  • 請求業務では担当者1人分の工数削減を実現

ユーザーの声

三喜運輸株式会では、管理部門が総務や経理、システム導入を担当しており、従業員数が約120名、事業所も8拠点に拡大する中で、バックオフィス業務の負担が大きな課題となっていました。特に、経理や請求業務の負担が増し、「業務効率化のためにITを活用したい」と考えていたものの、新しいシステムの導入や業務の整理を行う時間が取れない状況でした。
そんな中、「Chatwork アシスタント」の存在を知り、経理・労務の業務代行やシステム導入支援に期待を持ち、導入を決定。まずは助成金申請のマニュアル作成を依頼し、その後、特に負担が大きかった請求業務の効率化を進めました。スプレッドシートを活用した管理システムを構築し、請求処理の進捗や内容をリアルタイムで把握できるようになったことで、担当者1人分の工数を削減し、情報共有のスピードも向上しました。
さらに、経費精算の仕組みも改善。申請フォームとスプレッドシートを連携させることで、一元管理が可能になり、経理業務の負担が大幅に軽減されました。また、採用業務のアシスタントも依頼し、入社準備までのプロセスを効率化。これにより、バックオフィス業務全体の最適化が進みました。
今後は、会計ソフトへのデータ入力の自動化や、運輸管理システムとの連携を進める予定です。「Chatwork アシスタント」は、単なる業務代行ではなく、実際の運用に合わせた柔軟な対応が可能な点が大きな魅力。今後も業務効率化を進めるための重要なパートナーとして期待が寄せられています。

三喜運輸株式会社http://www.sanki-truck.com/
昭和45年設立の埼玉県羽生市を拠点に運送業を展開する三喜運輸株式会社。顧客第一・安全・迅速を経営理念に掲げ、顧客物流の最適化・経営目標達成を目指している。一般区域貨物自動車運送業、貨物運送取扱業務、混載運送、貸切輸送、引越しサービスといった業務を展開。